誰か故郷を想はざる

誰か故郷を想はざる (角川文庫)誰か故郷を想はざる (角川文庫)
(2005/03)
寺山 修司

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★★★☆☆3 難しいので3。また理解できるように再読したい

寺山のブラック・ユーモア溢れる自叙伝です。
最初自叙伝ということを頭に入れず黙々と読んでたら
何このカオスエッセイ(もしくはカオス小説)と素で思っちゃいました。

「おまえは走っている汽車のなかで生まれたから、出生地があいまいなのだ」
と母に言われた寺山は、一所不在の思想に取り付かれて青春時代をすごします。
「帰る故郷のあるやつァよかろ/俺にゃ故郷も親もない」と唄う軍人。自慰のネタに実母を用いる同級生。母を殺した北朝鮮の少年。
そういうものに自ら近寄っていき、少なからず興味を持つ寺山の姿が
印象的でした。

私はこの自叙伝で寺山修司の素性を初めて知ることになり
その人生の経過が予想よりも遥かにすさまじいものだったということに
少なからず感動を覚えました。
この感動というのは、たとえば学習院出身の上流階級で構成される
白樺派の求めるような人道主義や、地主階級の息子である太宰が
その青年時代に社会主義活動に加担するようなものへの反発であり、
いわばねたみのようなもの、それが解消されたときに起こる感動です。
はい、すみません。いかにもわたしは小市民です。
しかしそういう枯渇精神のようなものが無ければ、寺山の書く批判の篭った
作品やエッセイにも説得力が欠けるわけで、そういう意味ではまったく
期待を裏切らないでくれました。
この自叙伝には少なからず創作がありますが、年表を見る限り
大枠にははずれてはいないと思います。
何より言葉の魔術師、寺山だから、私が騙されているという可能性も
否定できませんが。

面白いなぁと思ったのは、
「桂馬」「西部劇」「東京」「友人」「政治」「反読書」…などなど。
桂馬の動き方―2歩進んで右か左か選ぶ―と、
パチンコの玉が落ちる動き―左へ落ちたらダメらしい―から
戦後の思想の変化に喩えているところは見事すぎます。
あと、ロマン・ロランの読書会についての「書を捨てよ町へ出よう」の
反論が痛快でした。この回が実は一番ワクワクした。

また、寺山が作中で太宰昇天について少し語っています。
テンションあがりました。

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